見知らぬ海外でのiPhoneの充電切れは国内にいる時よりも致命的となります。困り果てないためにもモバイルバッテリーの準備は必須といっていいでしょう。ところが、飛行機の搭乗の時にモバイルバッテリーには機内持ち込みや預け入れについて細かい規制ルールがあるのはご存知でしょうか? 手荷物検査でモバイルバッテリーを破棄しなければならないのかなど心配になる方も多いでしょう。そこで、今回は、「制限のある手荷物」であるモバイルバッテリーについて分かりやすくお伝えします。ぜひ参考にしてください。
目次
- モバイルバッテリーは「制限のある手荷物」
- ワット時定格量Whの容量計算
- リチウムイオン電池は危険物
- まとめ
(2016年2月24日 以下追記)
- JALとANAでは規制基準は国内線も同様です。
- 「国際民間航空機関(ICAO)」がリチウムイオン電池を預け入れ荷物として旅客機で輸送することを2016年4月1日より禁止すると発表しましたので、記事中に追記いたしました。
(2016年3月31日 以下追記)
- ICAO(国際民間航空機関)による2016年4月1日からの新基準は、JALとANAでは影響がなく本文中の規制基準のまま継続摘要されます。
1. モバイルバッテリーは「制限のある手荷物」
リチウムイオン電池は、航空会社によって「制限のある手荷物」:危険物として扱われます。リチウムイオン電池を内蔵したモバイルバッテリーと電子機器は数量、機内への持ち込み、預け入れに制限があり、この制限を超えたものは、「機内へのお持込み」も「預け入れ」もできません。
- モバイルバッテリーの大半はリチウムイオン電池を内蔵しています。
- 危険物として扱われるのはリチウムイオン電池を内蔵したモバイルバッテリーです。
1-1. リチウムイオン電池の確認方法
モバイルバッテリー本体を確認していただき「♻︎Li-ion」のマークが表示されているかどうか確認してください。「♻︎Li-ion」があれば制限の対象となるモバイルバッテリーです。
1-2. ニッケル水素電池は規制の対象外
ニッケル水素電池はリチウムイオン電池と比べはるかに安全なので、預け入れ制限はありません。「♻︎Ni-MH」のマークが表示されているかどうか確認してください。
規制対象外の安全なニッケル水素電池を採用したモバイルバッテリー。コンセントに挿すとACアダプター、単3・単4電池充電器にもなる1台3役のユニークな複合充電器。> more
1-3. モバイルバッテリー「♻︎Li-ion」は預け入れできない
モバイルバッテリー「♻︎Li-ion」は、容量に関係なく小型のものであってもスーツケースに入れて預け入れは一切できません。ご注意ください。
1-4. モバイルバッテリー「♻︎Li-ion」の機内持ち込みについて
条件 | 個数制限 | 持ち込み | 預け入れ |
リチウムイオン電池はワット時定格量が100Wh以下 | 制限なし | ○ | × |
リチウムイオン電池はワット時定格量が100Whを超え160Wh以下 | 2個 | ○ | × |
リチウムイオン電池はワット時定格量が160Whを超える | × | × | × |
ANA:制限のある手荷物(機内持ち込み・お預かりに条件があるもの)から抜粋
1-5. カメラやノートパソコンはモバイルバッテリー「♻︎Li-ion」より規制が緩い
条件 | 個数制限 | 持ち込み | 預け入れ |
リチウムイオン電池はワット時定格量が160Wh以下 | 制限なし | ○ | ○ |
リチウムイオン電池はワット時定格量が160Whを超える | × | × | × |
ANA:制限のある手荷物(機内持ち込み・お預かりに条件があるもの)から抜粋
- カメラやノートパソコンのバッテリーは製品本体に装着した状態でないと預け入れはできません。
- 製品本体とバッテリーと分けた場合、バッテリーは「予備電池」の扱いとなり、モバイルバッテリー「♻︎Li-ion」と同じく預け入れはできなくなります。機内に持ち込む手荷物にします。
2. ワット時定格量Whの容量計算
2-1. 容量規制の目安
条件 | モバイルバッテリー容量の目安 | 個数制限 | 持ち込み | 預け入れ |
リチウムイオン電池はワット時定格量が100Wh以下 | およそ27,000mAhを下回るモバイルバッテリーが該当します。 | 制限なし | ○ | × |
リチウムイオン電池はワット時定格量が100Whを超え160Wh以下 | およそ27,000mAhを超え43,000mAhを下回るモバイルバッテリーが該当します。 | 2個 | ○ | × |
リチウムイオン電池はワット時定格量が160Whを超える | およそ43,000mAhを超えるモバイルバッテリーが該当します。 | × | × | × |
モバイルバッテリーの内蔵リチウムイオン電池の定格定量を3.7Vとして換算
2-2. mAhからワット時定格量Whへの計算式
お手持ちのモバイルバッテリー容量が規制されるか微妙な場合は、以下の計算式で換算してください。
- ワット時定格量(Wh)=定格定量(Ah)×定格電圧(V)
- モバイルバッテリーは通常mAhで表示されています。mAh×1000=Ahです。
- リチウムイオン電池の通常定格は3.7vです。
計算例:13,400mAhのリチウムイオン電池のモバイルバッテリーの場合
1. mAhをAhに換算
13,400mAh÷1,000=13.4Ah
2. リチウムイオン電池の定格3.7vを乗算
ワット時定格量Wh=13.4Ah×3.7V=49.58Wh=およそ50Wh
→100Wh以下なので、個数制限なく機内に持ち込めます。
→リチウムイオン電池なので預け入れはできません。
3. リチウムイオン電池は危険物
ここからは、リチウムイオン電池が危険物として規制されることになった経緯についてお伝えします。
2006 年 2 月 7 日、フィラデルフィア空港において UPS の DC- 8 で起きた火災は、 搭載したラップトップ PC のリチウム・イオン電池が原因として疑われている。 機体は全損した。(出典:NTSB)
3-1. リチウムイオン電池の特徴
膨張したリチウムイオン電池
【リチウムイオン電池の用途】
ノートパソコン、タブレット、各種 モバイル機器、デジタルカメラ、携帯電話、医療 機器、e-シガレット、各種電気器具、ハイブリッ ト車両など広範囲にわたります。
【リチウム電池の消費量】
年々増加の一途をたどり 2000 年に 5 億個であったが、2010 年には 9 倍 の 45 億個、2020 年には 80 億個が推定されています。
【リチウムイオン電池の長所】
- 電圧が 3 V(ボルト)と一般電池に比べて高い
- マンガン電池の約 10 倍の電力量
- 長寿命で軽量
- 放電末期まで電圧が下がらない
- 低温でも使用可能
- 自己放電が少ない
【リチウムイオン電池の短所】
- 大電流の放電には向いていない
- 衝撃や温度などの外的条件により発火・爆発する恐れがある
- 重大な欠陥は、熱(温度)暴 走することで、特にリチウム金属電池には多く発生する。
3-2. 飛行機事故の原因の半分以上がリチウムイオン電池
貨物および旅客手荷物として運ばれていたリチウム電池が関わった事故およびインシデント の発生件数。FAA のまとめた資料では、1991 年 3 月 20 日から 2015 年 4 月 3 日までの間に 152 件の事故およびインシデントが記録されており、そのうち 79 件がリチウム電池に関連 している。(出典:FAA)
3-3. 最新鋭旅客機ボーイング787での事故
2013年1月7日の現地時間午前10時半頃、成田国際空港からのフライトを終えボストン・ローガン国際空港で駐機中のJAL008便の機体内部の電池から発火した。
2013年1月16日午前8時25分頃、山口宇部空港発東京国際空港行きANA692便が香川県上空10000メートルを飛行中に、操縦席の計器に「機体前方の電気室で煙が感知された」との不具合のメッセージが表示されるとともに異臭もしたため、運航乗務員が緊急着陸を決断、午前8時47分に高松空港に緊急着陸した。
ボーイング787に2013年、駐機中の日本航空(JAL)機と飛行中の全日本空輸(ANA)機にバッテリーからの出火事故が発生し、アメリカ合衆国連邦航空局 (FAA) は耐空性改善命令を発行した。運航中の同型機すべてが世界中で運航停止になるという事態となった。
3-4. アメリカ合衆国連邦航空局 (FAA) による勧告(2015/8/10)
預け荷物に予備のリチウム電池(デバイスの中にセットされていない、はだかの状態のもの)を入れることを禁止しています。手荷物として持ち込みたい場合には、電池がショートすることを適切に防ぐことが推奨されています。ビニルテープでターミナルを絶縁したり、個別に包装したり、また、バッグの中でコインやアクセサリーなどの金属と触れない状態を保ってください。また手荷物として持ち込めるサイズや個数には制限があります。
3-5. 2016年4月1日より適用されるICAOの規制でどう変わるのか?
追記(2016.02.24)
国連の専門機関「国際民間航空機関(ICAO)」が2016年2月22日に、「リチウムイオン電池を預け入れ荷物として旅客機で輸送することを4月1日から禁止する」と発表しました。
国連の専門機関「国際民間航空機関(ICAO)」は2月22日、リチウムイオン電池を預け入れ荷物として旅客機で輸送することを2016年4月1日から禁止すると表明した。航空機メーカーやパイロット側から、発火を懸念する声が出ていたという。ガーディアンなどが報じた。リチウムイオン電池は再充電が可能で、携帯電話やノートパソコン、カメラ、ヘアーアイロン、スマホのモバイルバッテリーなどに利用されている。リチウムイオン電池の旅客機での預け入れは、すでに多くの航空会社が原則として禁じている。温度変化が激しい航空機内の貨物室では、水分が付着して発火につながる恐れがあるためだ。発表によると、今回の措置は2018年に新しい耐火性包装基準が採用されるまでの暫定的なもの。対象は旅客機のみで、貨物機での輸送は許される。また、旅客機でも、リチウムイオン電池内蔵のパソコンやスマホなどを機内に手荷物として持ち込む場合は、対象外になるとみられる。
現状と規制は変わらない模様ですが、国交省や各航空会社がどのような対応を取るのか分かり次第、お伝えいたします。
(2016年3月31日 以下追記)
- ICAO(国際民間航空機関)による2016年4月1日からの新基準は、JALとANAでは影響がなく本文中の規制基準が継続摘要されます。
(2016年5月8日 以下追記)
4. まとめ
モバイルバッテリーの規制ルールについてお伝えしました。リチウムイオン電池を内蔵したモバイルバッテリーを預け入れのスーツケースに入れてしまうと、保安検査で必ず指摘されます。ご注意ください。
今回の記事の後半は少し刺激的な内容となってしまいましたが、安心のためには危険の範囲も知らなければならないと思います。
- モバイルバッテリーは「制限のある手荷物」
- WhからmAhへ換算
- リチウムイオン電池は危険物
この記事を読んだ方々が、手荷物検査の不安が解消され、スムーズな搭乗手続きが出来るようになれば幸いです。
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